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法律ひとくちメモ

成年後見について

Q 成年後見制度というものがあると聞きました。いったいどんな制度なの?

 成年後見制度とは、精神上の障害により判断能力が低下した場合に、その判断能力を補ってくれる援助者をつける制度をいいます。

 人が社会生活を営む上では、常に、契約などの法律上の行為に関わり合わあければなりません。例えば、アパートを借りたり、預貯金の払い戻しや預け入りをすることも法律上の行為です。

 ところが、高齢になって認知症などになったり、知的障害や精神障害などのために契約ができなかったり、不利益を被ったりする場合があります。そのような場合、判断能力が低下した人の判断を補い、本人の権利や利益を護ってくれるのが成年後見制度です。


Q どんな場合に、成年後見人をつけることができるの?

 精神上の障害により判断能力が低下した場合につけることができますが、その程度によって、成年後見人、保佐人、補助人に分けられます。

【成年後見】
 この内、成年後見人は判断能力の低下が一番重い場合で、精神上の障害により、おおむね判断能力を欠いている状態にある場合につけられます。分かり易く言うと、自分自身では物事を判断することが全くできないような場合がこれに当たります。

【保 佐】
 次に程度の重いのが保佐人で判断能力が著しく不十分と認められる場合につけられます。ある程度判断能力が残っていますが、大事な財産を管理するには、常に誰かに援助してもらう必要があるような場合がこれに当たります。

【補 助】
 一番程度が軽いのが補助人で、判断能力が不十分と認められる場合につけられます。補助の場合、身の回りのことは大体自分ですることができますが、難しい事柄になると援助が必要というような場合がこれに当たります。
 判断能力の低下がどの程度重いかについては、医師の診断書をみて、あるいは医師の鑑定をした上で家庭裁判所が決めることになります。


Q 成年後見の申立ては誰がするの?どこにするの?申立てをするのにいくら位かかるの?

 申立てをすることができるのは、4親等内の親族です。ご自身の妻、父母、兄弟姉妹、いとこ、妻の父母、妻の兄弟姉妹、妻のおじ、おば、おい、めいに申立権があります。

 申立てをする先は、ご本人の住所を管轄する家庭裁判所です。家庭裁判書の窓口に行くと、申立てに必要な書類一式をもらえます。また、弁護士等にご相談頂ければ、あなたに代わって、申立ての手続を致します。

 申立て費用としては、1件について収入印紙800円、郵便切手が若干かかります。各裁判所によって金額が異なりますが、おおむね1万円以内で済むと思われます。

 また、ご本人の判断能力の低下がどの程度かを調べるために鑑定をする場合がありますが、その場合は鑑定費用が5万円ないし10万円程度かかる場合があります。ただし、最近の家庭裁判所の取扱いでは、最初にご提出頂く診断書で一見して判断能力が欠けていると分かる場合は鑑定を省略します。鑑定をしない事例が半分以上を占めているのが現状です。

 その他、弁護士等が代理をする場合には、弁護士費用をご負担頂くことになります。金額は弁護士によって異なりますので、一度ご相談下さい。また、弁護士費用については、一定の資力基準がありますが、法テラス(司法支援センター)の法律扶助による立替制度をご利用できる場合があります。法律扶助をご利用頂ければ、当面、弁護士費用がご用意できなくても、申立てをすることは可能です。


Q 成年後見人がつくと、どんなことをしてもらえるの?

 成年後見人の職務は大きく分けて二つあります。

【財産管理】
 一つが、ご本人の財産管理をすることで、ご本人の預貯金が無駄に使われたりしないように適切に管理をします。また、ご本人が施設に入所されたり、病気で入院等する場合には、ご本人に代わってサービス利用や入所の契約をします。
 例えば、こんな事例が考えられます。高齢の父親Aさんを持つBさんという方がいるとします。Bさんには、実兄であるCさんがいて、父親Aさんと同居して、Aさんの身の回りの世話をしています。ところが、Bさんが父親Aさんを訪ねたところ、Aさんはやせ細り、きたない布団に寝たきりになっていて、その生活振りを見ると、Cさんから満足な世話を受けられていない可能性があります。また、Cさんは無職で、父親Aさんの預貯金を食いつぶして生活をしている心配もあります。Cさんは、BさんがAさんの預貯金の通帳を見せるように言っても、一切応じず、最近ではAさんに会わせることすら拒むようになったというような状況があったとします。
 この場合、Bさんが、父親Aさんを守る有効な手段として成年後見申立てをすることが考えられます。成年後見人がつくと、Aさんの預貯金通帳は、選任された成年後見人が以後管理することになりますので、Cさんが勝手に使うことができなくなります。また、自宅での介護が難しいという状況があれば、成年後見人が介護施設、病院等への入所契約をして、Aさんの身の安全を確保することも可能となります。

【身上監護】
 成年後見人のもう一つの役目はご本人の身上監護です。ただ、身上監護をすると言っても、成年後見人が直接ご本人の身の回りの世話をするということではありません。成年後見人は、実際にご本人の世話をされるご家族、福祉関係者と連携をとりながら、ご本人の身上監護が適切になされるようコーデイネートする役割を担います。


Q 誰が成年後見人になるの?成年後見の申立てをしたいと思っていても、成年後見人になってくれそうな人がいません。そのような場合でも、成年後見の申し立てができるの?

 誰が成年後見人になるかを決めるのは、申立てを受けた家庭裁判所です。申立てをする際に、成年後見人になって欲しい人を候補者として推薦することができます。申立てをするご本人が成年後見人の候補者になっても構いません。例えば、高齢で判断能力が低下した父親の成年後見申立てを長男が行い、その長男が成年後見人の候補者ということで申立てをすることもできます。この場合、特に問題がなければ、家庭裁判所はその長男を成年後見人に選任します。このように身内の方が成年後見人になる場合を親族後見人といいます。

 ただし、推薦した候補者の方がそのまま成年後見人になるとは限りません。管理する財産の規模、他のご親族の意向等により、家庭裁判所が身内以外の者を成年後見人に選任することもあります。また、成年後見人のなりてがない場合にも、成年後見の申立てをすることができますが、この場合も、家庭裁判所がその事例を見た上で、適当な人を成年後見人に選任します。これらを第三者後見人といいます。

 第三者後見人として選任されるのは、弁護士、司法書士、社会福祉士等の有資格者ですが、最近では、社会福祉協議会、NPO法人等の法人後見人が選任されることがあります。また、現時点では少数ですが、将来的には、資格を持たない一般市民による市民後見人が多数選任されるようになるかも知れません。どのような資格者を第三者後見人に選任するかについても、家庭裁判所がその事例の性質(紛争があるか否か)、管理する財産の規模(多いか少ないか)等を考慮して、家庭裁判所が決めることになります。


Q 成年後見人は報酬がもらるの?いくら位もらえるの?誰が金額を決めるの?

 成年後見人は、報酬をもらうことができます。
 報酬の金額を決めるのは、家庭裁判所になります。通常、成年後見人は定期的に家庭裁判所に対し、事務処理の報告書を提出しますが、これと併せて報酬請求の申立てをします。家庭裁判所は、その事務処理の報告を見て、報酬の金額を決めます。どのような基準で報酬の金額を決めるかについては明らかにされていないので、その基準は不明としか言い様がありませんが、一般的には管理する財産の規模の大きさ、手掛けた事務処理の複雑さ等を考慮して決められるようです。ただし、成年後見人の報酬は、ご本人の財産の中からもらうことになりますので、ご本人の預貯金等が少額しかない場合には、報酬をもらうことができない場合もあります。また、親族後見人の場合、3親等内のご親族には法律上扶助義務があることから、報酬請求が認められない場合もあります。


Q 任意後見制度というものがあることを聞きました。どんな制度なの?

 任意後見制度とは、ご本人に考える力、判断する力が十分な内に、自分が最も信頼する人に対し、将来、自分が精神上の傷害により判断能力が不十分になった場合に備えて、自分の生活、療養監護、財産管理等に関する事務を委託するものです。

 手続としては、まず、ご本人と任意後見人となる予定の方との間で任意後見契約を締結します。この任意後見契約は公正証書で行う必要があります。また、通常、この任意後見契約と一緒に現時点での自身の財産の管理を委託する財産管理契約を締結することもあります。

 その後、任意後見人の予定者は、定期的にご本人の生活状況、身体状況を把握し、いよいよご本人の判断能力が不十分になった時点で、家庭裁判所に対し、任意後見申立てを行い、家庭裁判所の決定により任意後見人に正式に就任します。また、これ以降は任意後見人に対し、家庭裁判所が選任した後見監督人がつけられ、任意後見人が適正に財産管理、身上監護を行っているかを監督させます。

 任意後見制度をご利用になる場合は、その依頼する弁護士との間で報酬等につき別途お決め頂くことになります。まずは、ご相談下さい。また、この場合も法テラスよる法律扶助をご利用頂けますので、この点についても気軽にご相談下さい。
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