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法律ひとくちメモ

消費者被害とその対処法(1)~クーリングオフ

1 消費者被害とは?

 誰でも1度は電話での商品の勧誘や訪問販売を受けた経験があるかと思います。その際に、業者の巧みな勧誘に惑わされて商品を買ってしまったり、断っても執拗に勧誘をしてくる業者もいますので、根負けして商品を購入してしまう人もいます。こういった場合、考えていた物と全く異なる商品が送られてきたり、契約内容が購入者に一方的に不利な内容のものであったりすることが往々にあり、後日になって契約をなかったことにしたいと思っても、業者は簡単には応じてくれず、泣き寝入りしてしまう人もいます。こういったトラブルは商品の購入に限られたことではなく、サービス(役務)の提供を受ける内容の契約の場合にも起こります。
 しかし、自分が納得していない商品を購入させられたにもかかわらず、契約を取り消すことができないということは、とても不合理なことです。
実は、こうしたトラブルが発生した場合に、消費者自身が身を守るために法律上取り得る手段がいくつかあり、その代表的な手段がクーリングオフなのです。


2 クーリングオフとは何か


i クーリングオフとは、一定の取引形態について、所定の期間内であれば、何らの理由を必要とせず、かつ、無条件に契約を解除することができる制度です。つまり、クーリングオフを行使すると、契約は遡ってなかったものとして扱われることになり、業者は受け取った代金を消費者に返還しなければならなくなりますので、消費者は支払ったお金を取り戻すことができることになります。

ⅱ このように、クーリングオフは、何の理由もなく1度結んだ契約を解除することができる制度でありますので、消費者被害にあった人にとっては非常に有効な対処法となります。
 ただ、注意していただきたいのは、クーリングオフには期間の制限があることと、あらゆる契約にクーリングオフ制度が認められているわけではなく対象となる商品も規定されているということです。また、クーリングオフ制度が設けられている法律は数多くあり、それぞれの法律で適用要件や行使期間も異なりますので注意が必要です。
 

3 クーリングオフ制度が設けられている法律


i クーリングオフ制度が設けられている代表的な法律には次のようなものがあります。
① 特定商取引法
② 割賦販売法
③ 金融商品取引法
④ 保険業法
⑤ 宅建業法
⑥ ゴルフ場等会員権契約適正化法
⑦ 商品ファンド法
⑧ 特定商品預託取引法

ⅱ このように、様々な法律においてクーリングオフ制度が設けられておりますが、2004年に法改正が行われた特定商取引法では、様々種類の取引に適用されうるクーリングオフ制度が定められておりますので、消費者にとっては、最も頼りになる法律の一つかと思います。
 

4 特定商取引法上のクーリングオフ制度の概要

i 適用される取引形態
 クーリングオフが適用される取引形態は次の5種類です。なお、通信販売には適用がありませんのでご注意下さい。
① 訪問販売
② 電話勧誘販売
③ 連鎖販売取引
④ 特定継続的役務提供
⑤ 業務提供誘引販売取引

 ③は、いわゆるマルチ商法のことです。④の契約の代表的なものとしては、教育や美容サービスの提供契約があげられます。⑤の代表的なものとしては内職商法やモニター商法があげられます。

ⅱ 対象商品
 クーリングオフが可能な対象商品は、連鎖販売取引と業務提供誘引販売取引においては制限がなく、全ての商品・役務・権利が対象となりますが、その他の取引においては政令で指定された商品・役務・権利に限られます。

ⅲ 行使期間
a 行使期間は、訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供では、法定の契約書面が交付されてから8日間です。
b 連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引では、法定の契約書面が交付されてから20日間は行使可能となります。
c なお、契約書面が交付されたとしても、その書面の記載に不備があったり、虚偽の記載がある場合には、法定の書面を交付したことにはならないので、上記期間を過ぎてもクーリングオフを行使することができます。
 また、業者がクーリングオフ等に関する事項について嘘をついたり、威迫行為によりクーリングオフの行使を妨害したときも、業者が契約を解除することができる書面を改めて交付し、かつ、クーリングオフの行使ができることを消費者に説明する義務を果たした日から8日間若しくは20日間経過するまではクーリングオフができます。

ⅳ 行使方法
 クーリングオフは、書面によって行う必要があります。そして、その書面に記載する内容は、以下のとおりです。
① 差出人と受取人の氏名及び住所(差出人ついては捺印が必要です)
② 契約締結日・商品名・代金
③ 契約を解除する旨の意思表示
④ 支払済代金の返還を請求する意思表示と返金方法
⑤ 受領済商品の引き取りを請求する意思表示
⑥ 書面を交付した日付
 なお、以上の記載事項については、あくまでも一例であり、契約内容や契約状況等によって記載事項が変わる場合がありますのでご注意下さい。
 また、クーリングオフを行使する際には、後日の紛争を避けるために内容証明郵便等を利用するなどして、後日証拠として残るような形にすることが有用です。

ⅴ 訪問販売・電話勧誘販売におけるクーリングオフの適用除外
 訪問販売と電話勧誘販売においては、以下の場合にはクーリングオフの行使ができませんのでご注意下さい。
① 乗用自動車(政令指定商品ですがクーリングオフできません) 
② 政令指定消耗品(健康食品や化粧品等)
③ 3000円未満の現金取引

ⅵ 効果
 クーリングオフを行使すると業者には代金全額を返還する義務が生じ、業者は消費者に対して、損害賠償や違約金を請求することもできなくなります。また、引渡済の商品の返還費用も業者負担となります。さらに、消費者には、サービス(役務)提供を受けてもその代金を支払う義務は発生しません。 

ⅶ 最後に
 以上が特定商取引法上のクーリングオフ制度の概要であり、消費者の方がご自分でクーリングオフをすることも十分に可能です。ただ、クーリングオフ制度には、適用対象となる取引形態や商品に制限があったり、行使期間にも制限があるなどいくつかの例外が設けられています。従って、契約がクーリングオフの適用対象となる取引に該当するのか、行使期間は経過していないか、法定の契約書面に不備がないか等について判断し難い場合もあります。このような場合には、専門家である弁護士等に相談して、適切なアドバイスを受けられることをお勧め致します。
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