偽装請負と直接雇用請求
Q 偽装請負とは何ですか。A 請負とは「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払う契約」をいいます(民法632条)。労働契約と違って、仕事をする者は自らの管理と責任で仕事を完成させます。請負と似たものとして派遣があります。この請負と派遣の区別について、昭和61年4月17日付労働省告示第37号は、請負は、「業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものであること」「自己の責任と負担で準備し、調達する機械・設備・機材・材料・資材により業務を処理すること」などの要件を全て満たすことが必要とされています。
ですから、A社がB社から製造の仕事を請け負い、あなたがA社が請け負った仕事をしているという形を取った場合でも、あなたがB社の係長や主任の指示のもとに働いている場合は、実際は、A社からB社に派遣されて、B社の指揮命令のもとに働いていることになります。このように、実質は派遣なのに請負の形式にしているものを偽装請負といいますが、期間制限や直接雇用義務などの派遣法上の義務をまぬがれるために行われることが多いのです。
Q 直接雇用義務とは何ですか。
A 派遣法には、「派遣先は、派遣元から1~3年の制限期間を超える日以降労働者派遣を行わない旨の通知を受けた場合において、その制限期間を超えて派遣労働者を使用しようとするときは、派遣先に雇用されることを希望する労働者に対し雇用契約の申込みをしなければならない」(派遣法40条の4)と定めています。これが派遣先の直接雇用義務と呼ばれているものです。
派遣労働者が派遣先に直接雇用されることを申し出ているにもかかわらず、派遣先が雇用契約を申し込まないときは、厚生労働大臣(都道府県の労働局長)は、派遣先に対して、雇用契約の申込みをするように指導、助言、勧告することができます。派遣先が労働局長の勧告にしたがわないときは、労働局長は、そのことを公表できます(同法48条1項、49条の2第1項、3項)。これらの規定を活用して、都道府県の労働局に申告して直接雇用を実現させるのです。
偽装請負は実際には派遣ですから、同様に派遣先に直接雇用義務が生じます。偽装請負の場合には、派遣元の「制限期間を超える日の通知」がありませんが、偽装請負は派遣元と派遣先が共謀して行うものであり、派遣元が派遣先に対して「制限期間を超える日の通知」などとするわけがありません。ですから、偽装請負の場合は、この通知がなくても直接雇用義務が生ずると考えるべきです。このような場合、弁護士など専門家に御相談下さい。
また更に進んで、偽装請負の場合に、労働者と「派遣先」との間に黙示の労働契約が成立していると考えられる場合があり、その雇い止めは更新拒絶の濫用として許されないとした判例があります(松下プラズマディスプレイ事件大阪高裁判決)。
Q 直接雇用の場合はどうなりますか。
A 派遣先は、直接雇用しても、6ヵ月程度の有期雇用にした上、賃金などの労働条件も請負労働者時代の労働条件と比べて改善しようとしないことも多いのが現実です。しかも、労働者の契約更新への期待権が生ずるとまずいからと、最長2年11ヵ月で打ち切りにしようとします。定年までつとめられる正社員化を勝ち取るためには、しっかりした労働組合などに相談するなど団結の力も必要となるでしょう。